レバーケーゼの謎
何でお肉なのにチーズなのか?その謎についてまとめてみました。

パンの存在の方がデカくてすみません。パンに挟まっているのがレバーケーゼです。バイエルンでは、お肉屋さんでテイクアウトできる軽食としてポピュラーな「Leberkäsesemmel(レバーケーゼのサンドイッチ)。うちの近所ではこれで1個2,20ユーロです
2月半ばに、Twitterのドイツ界隈(ドイツに住んでいたり、ドイツに関わる仕事をしていたり、ドイツが好きだったりしてドイツ語ができる人たち)の一部をざわつかせた案件がありました。

日本の手作りソーセージ屋さん、マイスター東金屋さんのインスタグラムを見た、ドイツ在住のpiyoさんが投稿したものです。
ここで「ケーゼ」として紹介されているものの正体は、日本ではスパムとして知られているものに相当します。
日本のソーセージ屋さんのいくつかのサイトでも詳しく説明されていますが、これはソーセージの材料を腸ではなく型に入れて焼いたもののことで、ドイツ語ではフライシュケーゼ(Fleischkäse)、またはレバーケーゼ(Leberkäse)と呼ばれています。
ここでなぜ、ドイツ語話者の多くが引っかかってしまったかというと、これらのフライシュケーゼ、レバーケーゼが単に「ケーゼ」と略されていて、「型に入れた焼いた肉料理」の代名詞として説明されていたからです。
ケーゼ(Käse)はドイツ語ではチーズを意味し、フライシュケーゼなどの食品をケーゼと略して呼ぶことはドイツではありません。
実はそもそも、このフライシュケーゼ、レバーケーゼという名称が曲者で、チーズとは何の関係もないのに「ケーゼ」という名称がくっついているんですよね。そこにも混乱の理由の一端があると思われます。
ドイツ人の間でも、「なんでケーゼなんだ?」という疑問を持っている人は少なくなく、誤解を招きやすい名前ではあるのです。
翻訳家で友人の中村智子さんが教えてくれたことによると、この名前の由来には以下のような説があるのだとか。

レバーは古高ドイツ語のLaiba(残り物)
ケーゼはKasten(箱)に由来するとか。
Leber für althochdeutsch laiba (= Rest)
Käse für althochdeutsch = Kasten
日本のフライシュケーゼの名前の由来はこちらの説からなのかもしれませんね
bedeutungonline.de/warum-heisst-l… Warum heißt Leberkäse "Leberkäse"? Wortherkunft, Erklärung, Bedeutung - Bedeutung Online Leberkäse hat weder explizit etwas mit Leber noch (bis auf e www.bedeutungonline.de
こういう説もあるそうです。
レバーは古高ドイツ語のLaiba(残り物)
ケーゼはKasten(箱)に由来するとか。
Leber für althochdeutsch laiba (= Rest)
Käse für althochdeutsch = Kasten
日本のフライシュケーゼの名前の由来はこちらの説からなのかもしれませんね
https://www.bedeutungonline.de/warum-heisst-leberkaese-leberkaese-wortherkunft-erklaerung-bedeutung/
東金屋さんのHPでも、同様の説が引用されています。
もともとフライシュケーゼは「残り物を箱に詰めたもの」といった意味合いの "Rest im Kasten" という言葉がなまって、「レバーケーゼ」と呼ばれていました。
ドイツの古語でRestは”Laiba”とよばれ、それがなまってレバーになったとされています。なのでここでいうレバーは、食べるレバーとは関係がありません。
レバーケーゼと呼ばれるスパムに、実はレバーもケーゼも入っていないところから(地域によって、レバーが入っている場合はある)名前の由来が「レバーもチーズも入っていないから」だと冗談めかして言われることもあり、私は個人的にこの説が気に入っていました。
ちなみにフライシュケーゼの「フライシュ」はお肉の意味で、言葉通り直訳すると「肉チーズ」なのですが、チーズは入っていないという謎めいた名称です。
東金屋さんに問い合わせたところ、「(日本でこの食品が)ケーゼと略されているのは、単にフライシュケーゼでは長すぎるからではないかと思います」との返答をいただきました。
一方で、フランス語のシュー・ア・ラ・クレームが日本ではシュークリーム(靴クリーム?)と呼ばれたり、ウィンナー(ウィーン風)ソーセージが単にウィンナーと略されたりするように、外国の食品が日本に入ってくる際に、日本人に覚えやすいような名称に転換されてきたケースは枚挙にいとまがありません。
また逆も然りで、外国で日本の食品に出会うときにも同じ法則が適用されていることがあります。
最近ではインスタント焼きそばが「Soba」という名称でドイツのスーパーマーケットに置いてあるため、それを愛食しているドイツ人の友人は、焼きそば=ソバだと思い込んでいました。
このように、日本では「チーズ」と呼ばれる謎肉になってしまったフライシュケーゼ。
ケーゼという名称に日本で親しんだ方が、本場ドイツのお肉屋さんであれが食べたいと思った時に「ケーゼください」と言ったら、一体何が出てくるのか…そのことが若干気になります。
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